「グロテスク」

2003年7月31日 読書
「グロテスク」桐野夏生 を読む。

昼は一流企業キャリア・夜は娼婦の和恵の言葉。
「好奇心。あたしが大会社のOLでQ大卒だと告げると客は感心した顔をするが、そのあと決まってなんであんたがこんなことしてるんだ、と同じ質問をした。
あたしは仕事のできるOLだからこそ夜はエッチな娼婦になれるのよ、と答えたものだ。
あたしは自分が優れた娼婦だと誇りに思ったし、会社に行けば行ったで誰もまねのできない冒険をしている自分に満足していた」

☆☆☆☆☆☆

「東電OL事件」に取材した作品。
分厚い本でしかも二段組。
でも怖いもの見たさも手伝って読み始めたら止まらない!読み応えじゅうぶん。
心の闇に光をあてる。うますぎる、桐野夏生!!

圧倒的な美貌に対するコンプレックス、小学校からある名門Q女子高における階級社会や内部生の外部生に対するいじめ、カルト宗教、次々と語られる売春行為・・・。
一流企業に勤めながら夜の街に立つようになった和恵の心の闇を浮き彫りにした事件直前の日々の日記は凄まじい、の一言。
精神が崩壊していく様子がよくわかる。

「あたしは一流企業の副室長なのよ」と名刺を見せながら、ただの2千円ででも男に買われたいという和恵の気持ち。
それは確かに救いようのないものだろうが「男と交わることでだけ世界を征服したような気持ちになる」和恵の気持ちはアタシはわからないでもない。
「昼は一流企業の副室長・夜は娼婦」という間でしかバランスを保てなくなった和恵の気持ちは共感できる部分がある。

・・・私も同じような心の動きで自分を保ったことがあるから。
「私は今はこんなだけどこんなこともしてるのよ」という思いは人間を強くさせるのだ。
煮詰まった「日常」をお手軽にリセットできるのは日常とかけ離れた「非日常」だけなのだ。

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