今年の芥川賞受賞作
「ハリガネムシ」by吉村萬壱 を読む。

主人公の高校教師の言葉。
「こういう事がしてみたかったのだとこの時初めて気づいた。
人間の肉体を思い切り切り刻みたいという欲望を、ハリガネムシのように体の中に飼っていたらしい。
私は興奮し糸で縛られたハムのようになった傷口に人差し指を突っ込んでねじ回しながら猛然と自涜した。絶叫が耳を貫いた」

☆☆☆☆☆

主人公が特殊浴場で働く女性と付き合ううちに、自身に潜む暴力性を引き出されていくといった展開。

ハリガネムシ。
題名でまず「やられた!!」と思う。
アタシは虫が大嫌いだ。
特に羽のあるもの・腹がぶっといもの。

・・・子供の頃、道端でカマキリを棒でつついたりしていたときのことだ。
そのカマキリは初めから弱っているようだったが私がからかっているうちに死んでしまった。
ところがその腹から糸状の長い虫が出てくるではないか!
ちょうど田んぼの近くでその虫は奇妙に跳ねたりくねったりしながら水に入っていった。
・・・子供心にとても恐ろしい体験で、泣きながら家に帰ったことを思い出す。
今こうして書くだけで鳥肌が立つ。

かなり後になって知ったのだが、この長いものは「ハリガネムシ」。
カマキリ、水生昆虫、魚、まれに人間 などに寄生するという。
寄生するとその体内で成虫になり時期が来ると宿主を水辺に連れて行く。
そして腹を破裂させて飛び出し水中で生活を始める。

そんな幼少期のトラウマを思い出させる題名「ハリガネムシ」。
読む前から何かまがまがしいものを予想させ予想通りの暴力性のある展開。
私としては好きな内容でも文章でもない。
が、「読ませる」作品だ。

読みながら目をそむけたくなる表現にもかかわらずゾクゾクする心地よさを感じてしまうのは、私の中にも残虐性やサディズムといったような「ハリガネムシ」が宿っているからか。

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