太巻きの試練

2004年2月4日 日常
立春らしいぽかぽかしたいい天気。
きのうは節分。
節分と言えば「太巻き」と「いわし」と「豆まき」。

「節分の日、その年の恵方(えほう)を向いて太巻き寿司を一本そのまま丸かぶりすると一年しあわせに暮らせる」・・・なんてコンビニやスーパーで特設コーナーが出来たのはここ数年のことだろう。
それまでは「節分の日に太巻き寿司」なんて知らなかったし、生まれも育ちも関東の主婦仲間たちも「最近だよね」と言っている。

「恵方巻き」なるものを買ってみたのは今年が初めて。
何年か前から節分の日には巻き寿司といわしを食べてはいたが、コドモたちの口にあわせて「細巻き」を家で作っていた。
中身もたまご・かんぴょう・きゅうりのスタンダードな太巻きより、好みに合わせてまぐろやツナマヨのほうがおいしく食べられるし。

さて、今年の恵方は「東北東」だと言う。
食べる前に包みに書いてある能書きをコドモたちと読む。
「今年の恵方に向かひて無言にてこの太巻きを丸かぶりし、一心に無病息災を願うれば、かならずや福来たる」。
・・・ふむふむ。
娘「なんだかわかんないー」というので、「何もしゃべんないで、無病息災・・・健康で暮らせますようにってお願いしながら食べればいいんだよ。はい。いただきまーす」。

私もコドモたちも恵方(東北東)を向いたので、テーブルに座った位置からして娘は壁向き。
私は娘のうしろ姿のみが目に入る。
息子はそのななめうしろで二人を見渡せる位置にいる。

一口食べて・・・これを全部無言で食べるのは時間がかかりそうだ・・とまず思う。
中身はたまご・かんぴょう・きゅうり・ピンクのそぼろ・あなご、とスタンダードな太巻き。
とくにおいしいわけでもない。
そして当たり前だが太巻きだけあって極太である。
一口食べただけで口いっぱいにちらし寿司(すし太郎バージョン)をほおばっているカンジ。
コドモたち、完食できるか?と思いながら、私は無病息災、無病息災・・と心の中で念じ太巻きをやっつけていく。

シーンとした中に、左斜め後方から寿司を食べるくちゃくちゃした音が響く・・・。
息子だ。
いつも口呼吸をしている息子には、何か食べるときは鼻で息しないと苦しいよ、と事あるごとに言っているのだが。
太巻きで口の中がいっぱいになったらさぞ息が苦しいだろう。

そのふざけた咀嚼音に思わず笑いそうになるがぐっとがまん。
寿司をがぶついているので丸くなっている娘の背中も小刻みにふるえている。
笑いをこらえている様子。
ここで笑ったりしゃべったりしたら福が逃げてしまうー。

が、そこで息子のとぼけた一言。
「なんだっけ?危機一髪だっけ?」。
・・・・・・ばかっっ無病息災だってば!

「うぷっ!」娘はがまんできずに寿司の飯つぶを吐き出す。
そこで気づく。笑うことと食べることは一度にはできないんだよう・・・。
私も口いっぱいの寿司のために息が出来ず笑うに笑えず目は涙でいっぱいになり、手は水の入ったコップを探し宙をさまよう。
ひーひー笑う、というのはまさにこのこと。

息子はそのあともふざけモードにスイッチが入ったまま。
「みょーん」と不思議な音を発したかと思うと、今度はかんぴょうのみを口で太巻きから引きずり出している。
マックシェイクをストローでズズーっと飲んでいるかのよう。
あの手この手で笑わせようとしてくる。

それでも娘はすぐに態勢を建て直し、息子と私がいくら笑っても笑わそうとしてもひとりもくもくと壁の角に向かって太巻きを食べ続けみごと完食。
「福が来るのは私だけだね!」と得意げ。
しゃべらず笑わず太巻き一本完食すべし・・・福のために課せられた試練は思ったより過酷なものであった。

食事のあとは豆まき。
うちの中にまくとあとがめんどうなので、窓から庭に向けて「おにはーそとー。ふくはーうちー」。
コドモたちと交代で鬼の役をして、植木のかげに隠れたり窓の前を走り去ったりする鬼に豆をぶつける。

コドモ相手だから手加減して豆をぶつけるが・・・ダンナに鬼の役をやらせて本気で豆をぶつけたらさぞ燃えるだろうなあ。
毎年のように仕事だの飲み会だので節分にダンナがいないのはとても残念なことである・・・。

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