それぞれの春

2004年2月20日 日常
春から息子が行く中学の入学説明会に行く。

前を通ることはよくあったが校舎内に入るのははじめて。
建てられてからまだ10年ほどしかたっていないその校舎は、空間をぜいたくに使っていて廊下も広く吹き抜けからさしこむ光も暖かい。
「学校をチェックするときは掲示物やトイレを見ろ」と言うが、それもきれいでよく手入れされている。
説明を聞いたかぎりでは無理な校則でギュウギュウ縛られることもなさそうだ。
先輩後輩の関係も穏やかだという。

通学区域の関係で、息子の小学校から同じ中学に進む子はそれほど多くない。
いっしょに行くはずだった子のうち何人もお受験しているのでますます減ってしまった。
息子たちが4年にあがる年にその母達に何度も聞かれたものだ。
「お受験しないの?」「公立に行かせていいの?」。

ちょうど学習指導要領が切り替わり、公立と私立の格差がこれから歴然としてくるだろうと騒がれた時期。
ちょっと意識の高い家庭や経済的にゆとりのある家庭では中学受験を目指して進学塾に行かせ始めていた。
小学校4年生が自分から進路を決められるとは思えないので、中学受験を決めるのは「親」だろう。
うちの場合は、本人にその気もないのにやらせるつもりもなかったし、だいたい子供の進路だけにそんなにお金をかけるだけのゆとりもない。
息子と自分の性格からしてもお受験は親子関係を悪くするもとだと思ったので、その方向は選ばなかった。

「週に3日は弁当持って塾。帰りは10時」とか「土日はすべて塾」とか「夏休みは朝9時から午後4時まで毎日塾」とか「盆・正月こそ塾」とか「年間100万かかった」とか「親子ゲンカが絶えない」とか・・・・。
そんな話を聞くたびに「ああーうちでは無理だなあ」と思う。

3年間そうして努力した子たちはこの春、第一希望かどうかはわからないが私立中学に進学する。
たしかに私立中学のほうが学校側のめんどうみはいいだろう。
経済的に恵まれていて意識の高い家庭の子が集まるので親としては安心だろう。
アタシは去年の今頃は荒れている中学に勤務していたので公立中学の現状も少しはわかる。
さまざまな家庭環境で育った雑多な子たちが集まってくるのが公立中学だ。
息子はそんな中でせいいっぱい背伸びをして中学生の顔になっていくんだろうな。

仲が良かった友達と離れるのはさびしいらしく「学校にいるときはそうでもないけど、夜寝るときとかもうすぐ卒業だなあと思うとここんとこがキューっとなる」と胸を指差す。
「考えたり感じたりするのは頭なのに、どうして苦しくなったり楽しくなったりするのは胸なんだろう」とも言う。
・・・息子は息子なりに新しい生活を前にしていろいろと考えているんだなあ。

息子が行く中学は徒歩15分程度。
私立受験組は近場ではないので片道1時間半かけて通学する子もいる。
自転車で片道6キロの道を通う子もいる。
初めは親が送り迎えするという子もいる。
幼稚園のころからいっしょに遊んだ仲間たち。
何かあれば声をかけあい、遠出もしたしお互いにお泊りもした。
おかげで楽しさも2倍3倍になった。

幼稚園や小学生時代はそうして身近な大人の目に「守られて」いたのだなあと今になって思う。
それぞれにどんな春を迎えるんだろうか。

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