「せんせー、きょうの給食のデザートはヨーカンだよ」。
もうすぐ給食、というとき献立表を見ながら一年生が言う。

・・・はて。ヨーカン?ヨーカンって羊羹?
「ようかん?あの甘い黒いヤツ?」
「そうそう。ばあちゃんちで食べたの」。
「・・・そうなんだ」。

最近の給食はコーンフレークが出たりクレープが出たりするから羊羹が出ることもあるんだな、と私は納得しながら職員室に戻る。
それにしても小学生の給食のデザートに羊羹とはシブいセレクション・・・。
そう思いながら職員室分の盛り付けを手伝うためデザート類が入っている食缶を手に取る。
中にはあずきの光沢もしっとりと落ちついた一口サイズの四角い羊羹がお行儀よく並んでいる・・・と思ってふたを開けると、目に飛び込んできたのは鮮やかなオレンジ色。
三角形がずらずらっ並んでいる。

「あれーっ」。
頭に思い描いていたものとまるっきり違うものがあったので瞬間、思考が混乱する。
「あー、何?きょうは夏みかん?デコポン?」と事務のおねえさん。
盛り付けしてくれていた用務員さんが「イヨカンですよ」。
・・・ヨーカンってのは「いよかん」だったのか!

「一年生がね、きょうはヨーカンだっていうからー」と私が言うとみなさんとってもウケた。
その後、こういう夏みかん系のものは『お残し』が多くて残念だという話になる。
イヨカンも夏みかんも大きさによって四分の一とか六分の一とかにカットされて給食に出される。
が、食べ方がわからなくてそのまま残す子が多いというのだ。

まず厚い外側の皮をむき、小さい袋にわけ、その薄い袋ごと食べてもいいが薄皮をはがして食べる・・・そんなめんどうなことするくらいなら食べない、手が汚れるからイヤだ、そんな子も多いという。
そっかあー。考えてみれば、イマドキのお子様たち、家ではおかあさんがちゃんと薄い袋までとって口に入れればいいだけの状態で「はいどうぞ」って出してくれるんだろうなあ。

かと思えばちゃんとティッシュやハンカチを初めから出しておいて汚れた手をふきながら食べる子もいるという。
「ゆで卵とかみかんとかの『むきモノ』はね、家庭の様子がけっこうわかるんですよねえ」と先生方は言う。
・・・あははと笑いながらも、不安になる私だった・・・。

さて家に帰ってきょうの話をコドモたちにする。
「きょうねー、一年生がヨーカンだって言うからね・・・」と話始めると、息子あっさり「イヨカンだったんでしょ。給食に羊羹なわけないじゃん」。
あれっなーんだ。
娘も「そうそう。そういうときあった。イヨカン!」。
そうか。何年も小学生やってると同じこと経験してるわけだね。

ふと気になって「あんたたち、イヨカンちゃんとむいて食べてる?」と聞くと、娘「うん。でもね男たちはね、外側の皮ごと食べたりしてるよ」。
イヨカンを皮ごと・・。それはおいしくないだろう。
が、息子もみかんやメロンは皮ごと食べたりしてると前に言っていたなあ。
イヨカンは?

その件には触れてほしくないという顔をしている息子、「・・・オレは食べない。手汚れるし。食べ方知らないし」。
うわーっ不安的中!

「イヨカンの食べ方がわからないなんてイマドキのお子様は」と思ったら、うちの息子もそうだった。
考えてみれば、夏みかん系のものを食べるとき、カットして目の前においても息子は自分からは食べないのだった。
だから、食べてほしいという気持ちからつい私は甘い母になり薄い皮までむいて息子の皿に載せてやっていた・・・。

ただでさえちょっと独特の世界観を持つうちの息子。
よく歴代の担任の先生方には「ユニークなお子さんですね」と言われる。
これって「ちょっと変わっている」ということだよなあ、と私は思う。
学校では「磯野くんとこはどんな家庭教育を?」と職員室での話のタネにでもなっているんだろうか。

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