「長崎小6女児殺人事件」について。

仲がいい友達をカッターで切り殺す、しかも小学生が、というショッキングな事件。
母としてまず自分のコドモたちの学校やクラスの状況をそれとなくうかがう。
自分のコドモたちが被害者になるかもしれない、そして加害者になるかもしれないということ。
とりあえず「ヤバイときは逃げるんだ」などと忠告し、学校に送り出す。
「学校」という安全であって当たり前の場所で、こんな事件が起きるなんて・・・。

きのうの朝。職場に行くとボスはじめ上の方々は難しい顔をしてその「対応」を話し合っていた。
子供たちにどんな話をするか。家庭にどんなお手紙を出すか。

私はてっきり「全校朝会」(重要度が高い場合はコレ)かと思ったが、各クラスで担任が「命の大切さ」と「刃物などを持つことの危険性」などの話をするということ。
そして各家庭にも、その内容の手紙を配布するということ。

学級で担任が話す・・・というのは、ひとえにその担任の力量に関わってくるわけで。
そしてイマドキの子供たちに「命の大切さ」を話すと言ったって・・・。
さらに「カッターなど必要のないものは持ってこない」と禁止したって・・・。
奥歯にモノがはさまったようなその対応に「なんだか違う」と違和感を覚える。

「命は大切だから、人を殺すことはしてはいけないこと」というような「説明」を聞いて、タテマエではなく「そうだよね。人を殺しちゃいけないね」と心の底から思えるのかどうか。
「こいつムカつく。ブッ殺してやる」とカッとなったときに、「命は大切」という「言葉」で自分を制御できるのかどうか。

さまざまな生活体験から本当に「命は大切。すべての命は一度失ったら戻らない」と実体験していなければ、わかっていてわからないものだろうと思う。
それは、学校側の対応が間違っている、ということではなく。

実際、学校側ができることってこんなもんだろう。
「カッターの持ち込みを禁止する」とか「空き教室の管理を厳重にする」とか「給食前後や清掃時に目を行き届かせる」とかそんなことは場当たり的なものでしかない、ってわかっている先生たちも多い。
でも、具体的に今できる「学校側の対応」としてはこの程度しかないのだろう。

家に帰ってきたコドモたちに聞いてみる。
「学校で、事件のお話、あった?」。
娘「うん。『命を大切に』って。一時間目全部その話だった」。
息子「ラッキーだったじゃん。一時間目つぶれて」。
私「・・・中学は?どんな話だった?」。
息子「んー。まあ。微妙に」。
・・・まともにコミュニケーションがとれそうもない息子はおいといて娘に聞く。
「『命を大切に』ってどう思った?」。
娘「『ふうーーん』って」。

・・娘の担任の先生は、バランス感覚に優れた人格的に魅力がある先生。
きっと一時間、熱く語ったことだろうと思うのだ。
それをもってしても、この娘の反応。

もう少しつっこんで聞いてみたが、「命を大切に」と言われたってやはりコドモたちは実感としてよくわからないとのこと。
きっとうちの子たちだけではないだろう。
私だっていまひとつ「命を大切に」という言葉だけでは、実感としてストンと落ちない。

でも、娘が友達に刺し殺された父親の気持ちは「想像」できる。
おかあさんは数年前に亡くなっていて、兄二人を持つ末っ子だという。
日常の家事などずいぶんよく気が利く子だったという。
おとうさんにとってはどんなに大切な娘だっただろうか・・・。
そして、幼い子供を残して逝ってしまったおかあさんにとってもどんなに気がかりな娘だっただろうか・・・。
おかあさんは、天国でのその早すぎるその再会にどんなにか心を痛めているだろうか・・・。
そして、加害者の女の子のご両親もどんなに心を痛めていることか・・・。
こんな事件が起きるたびに思うのだが、自分の子供が殺人者になるなんてどこの親だって思うはずがない。

そんな話をコドモたちにする。
娘も息子も「うん。わかる。その気持ちは想像できる」。
自分ではない他者の気持ちを推し量る・・・そんな想像力。
今のコドモたちに欠けていること。
そして、人を殺してしまったらどうなるのか。
自分は、家族は、周囲の人は。
家の周囲にはさまざまなメディアの人々が押しかけ、あることないことすべてワイドショーや週刊誌で洗いざらいぶちまけられる。
ネット上でも顔写真や遠い親戚の経歴までもおもしろおかしく流される・・・。
そして自分の中で、人を殺したという記憶は一生消えない・・・。
そんな状況を読む想像力。それも欠けている。
そこまで言って初めて、息子も娘も「うわー。それイヤだ!絶対人なんか殺さない!」。

・・・「命を大切に」。
それは確かにそのとおりだ。
でもそんなお題目を唱えることも大切だろうが、もっと具体的な利害を説明することも必要なんじゃないだろうか。

未来ある子供の命が奪われる。
こんな事件は悲しすぎる。

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