「縮んだ愛」佐川光晴 を読む。
本文中より。
「妻が寝たきりの牧野少年を引き取るといいます。この真剣さはすでに20年以上も障害児学級の担任を続けている中で何度もお目にかかってきたものです。
特に20歳代の若い女性が初めて障害児学級を受け持った場合、それも彼女が養護教育を目指しているのではなく、配属の関係でたまたま障害児学級に回されてきたような場合によくあることなのですが、彼女はそれまで見たこともない現実に触れ、その結果、障害児に対して無防備に感情移入してしまうのです。
・・・ まったく鍛えられたことのない純粋さほど始末に負えないものもありません。」
「『あなただって50歳にもなってまだ学校では障害児と遊ぶ元気があるじゃありませんか』。
『仕事だからだよ』と私はぶっきらぼうに言いました。しかし、その言いようとは反対に私はその言葉にある自信を持っていました。
なぜなら誰も自分以外の者の人生に際限なく責任を持つことなどできないのであり、そうであればどこかでその役割の範囲を限定する必要があるからです。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
小学校の障害児学級の教員が、ラストでは元教え子の殺人未遂事件に巻き込まれる話。
夫婦のすれ違いがテーマか、それとも先生と教え子のストーリーか、それともイスラム教がらみか・・と半ばまで展開が読めないため、ラストにはそうきたか、という感じがある。
障害児教育の現場の話などはなかなかにリアルで興味深く読めるし、保険外交員である妻と教員である夫、という夫婦がどんなふうにすれ違っていったのか、こういうことの積み重ねってあるよね・・と自分にも置き換えて考えさせられる。
普通学級に入ってくる介助を必要とする子供のお世話、も私の仕事に入っているので、障害児学級の先生の考え方を知る、という点でも興味深い。
なにより文体がやさしくそれほど長くもないので読みやすい。
文中の「障害児に対して無防備に感情移入してしまう」「自分以外の者の人生に際限なく責任を持つことなどできない」の言葉は鋭い。
正義感や責任感にかられてついその気になることがある私には、痛いところをつかれたなあという思いがある。
あとで知るが「縮んだ愛」というのは谷崎潤一郎の「痴人の愛」を模したものとか。書き出し数行もまねてあるということ。
なるほど。昔読んだっけなあ、谷崎潤一郎。
実家の本棚に眠っているだろう。
お盆に行ったら探してみよう。
本文中より。
「妻が寝たきりの牧野少年を引き取るといいます。この真剣さはすでに20年以上も障害児学級の担任を続けている中で何度もお目にかかってきたものです。
特に20歳代の若い女性が初めて障害児学級を受け持った場合、それも彼女が養護教育を目指しているのではなく、配属の関係でたまたま障害児学級に回されてきたような場合によくあることなのですが、彼女はそれまで見たこともない現実に触れ、その結果、障害児に対して無防備に感情移入してしまうのです。
・・・ まったく鍛えられたことのない純粋さほど始末に負えないものもありません。」
「『あなただって50歳にもなってまだ学校では障害児と遊ぶ元気があるじゃありませんか』。
『仕事だからだよ』と私はぶっきらぼうに言いました。しかし、その言いようとは反対に私はその言葉にある自信を持っていました。
なぜなら誰も自分以外の者の人生に際限なく責任を持つことなどできないのであり、そうであればどこかでその役割の範囲を限定する必要があるからです。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
小学校の障害児学級の教員が、ラストでは元教え子の殺人未遂事件に巻き込まれる話。
夫婦のすれ違いがテーマか、それとも先生と教え子のストーリーか、それともイスラム教がらみか・・と半ばまで展開が読めないため、ラストにはそうきたか、という感じがある。
障害児教育の現場の話などはなかなかにリアルで興味深く読めるし、保険外交員である妻と教員である夫、という夫婦がどんなふうにすれ違っていったのか、こういうことの積み重ねってあるよね・・と自分にも置き換えて考えさせられる。
普通学級に入ってくる介助を必要とする子供のお世話、も私の仕事に入っているので、障害児学級の先生の考え方を知る、という点でも興味深い。
なにより文体がやさしくそれほど長くもないので読みやすい。
文中の「障害児に対して無防備に感情移入してしまう」「自分以外の者の人生に際限なく責任を持つことなどできない」の言葉は鋭い。
正義感や責任感にかられてついその気になることがある私には、痛いところをつかれたなあという思いがある。
あとで知るが「縮んだ愛」というのは谷崎潤一郎の「痴人の愛」を模したものとか。書き出し数行もまねてあるということ。
なるほど。昔読んだっけなあ、谷崎潤一郎。
実家の本棚に眠っているだろう。
お盆に行ったら探してみよう。
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