「介護入門」

2004年9月9日 読書
「介護入門」モブ・ノリオ を読む。

本文中より。
「苦行が俺の人生でしかないことをいらだちを通り越して狂う力もあるかなしかの陰惨な神経で語り、諦めて起き上がれと、死ぬ気で俺の肉と骨が重たく詰まった皮袋を引きずるのだ。
自らやろうと決めたばあちゃんの下の世話程度でこの有様だ、自宅介護で破綻するやつらもいるだろう。
肉親を殺し自分も死のうと考えるやつがいたっておかしくないさ、長生きしてくれと願う日々の甲斐甲斐しさの裏で、ふと、この生活がいつまで続くのかと青ざめる、それは未来永劫続くとおもわれるんだぜ。」
「現地リポート、現地リポート!コチラデハ、寝タキリの祖母ト、疲弊ノ峠ヲ越セソウニモナイ母親ト、自殺ニ見放サレタ俺ラガ、マダ死ナズニ生キタガッテイルヨウデス、朋輩(ニガー)。Ha、ha。「介護地獄」だと!表現としての強度を備えぬ言葉、恐るるに足らず!」

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

131回芥川賞受賞作ということ、著者の授賞式での写真がなんとも文学賞受賞者「らしく」ないこと、ラップ調の文体だということ、などで読みたいと思っていた。
それほど長くないので本屋でパートしている主婦仲間の横で座り読み(?)させてもらう。

「金髪の若者が大麻にふけりながら寝たきりの祖母の介護をする」ってなに?と内容にも興味いっぱい。
軽く読めるか、という予想に反して文学的な表現が多用されていてさくさくとはいかない。
けっこう文体が難しくてすんなり入っていかない部分もある。

イマドキの若者が「生きている実感」をつかみかねていて過酷な体験をすることで「生の実感」を得ている、そんな感じをまず受ける。
「蛇にピアス」を読んだあともそう思ったのだが、「生きる」というコントを思い出す。
何年か前のネプチューンが出ていたお笑い番組の中での、テリーとドリーという白人のプロレスラーに扮したふたりのコント。
「毎日毎日同じことの繰り返しばかりで生きてるって気がしないんだよー!」
さけぶテリーに、ドリーがゴムぱっちんとかさまざまな「痛い」思いをさせてやって「にいちゃん!生きてるよー!」と「生を実感」させてやる、というもの。

介護をめぐる心理描写、偽善を許さない態度、現場を知っているものならではのきれいごとではない描写。
内容は重い・・・・重い・・・・。
「ラップ」というよりものろいの言葉またはお経といった感じも受けてなんだか暗くなってしまったのだった。

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索