訪問介護であるお宅に伺ったときのこと。
食器乾燥機が壊れた、ということでちょうど電気屋さんが来ていた。

こういってはなんだけど、そのお宅は以前ゴミ屋敷であった。
ヘルパーが入るようになってから見違えるようにきれいになったとのことだが、築40年という重厚な洋風な造りの家はまさしくホーンテッドマンションなのである。

電気のかさ・家具の上にはほこりが降り積もり、天井からはそれは見事なくもの巣がたれさがる。
薄暗い台所や洗面所には所狭しと古いビンや汚れた空き箱が積み重ねてある。
使用期限「昭和58年」などと書かれたソースのビンとか、湿気て容器の中で動かなくなった食卓塩とか。
まだ中身が残ったまま干からびているコンビニ弁当や食べかけの柿やりんごも放置したまま。
なんだかわからない汁でスリッパもじとっとしている・・・。
あちこちに「ネズコロリ」とか「ゴキジェット」とか仕掛けてあるのだが、そんなことよりゴキやネズが生息しない環境を作るのが先でしょうと思うような状況。

そんな屋敷に住んでいらっしゃるのは楚々とした老婦人。
ふけば飛ぶような細身の体を三越で購入したかのような上品そうなスカートとカーディガンに包んでいる。
そのいでたちからして、ゴキと同居しているようにはまるで見えない。

電気屋さん、食器乾燥機が動かなくなった原因をあれこれ探っていたが、突然「ああー・・・」とため息のような一声。
「動かなくなった原因はですねえ、中にゴキブリがびっしりと巣を作ってるからですよ」。

ひえーっ。
ゴキの巣っっ!しかもびっしり!?
私と顔を見合わせ、「あらまあ、こんなお話もあるものねえ」とおほほと笑う老婦人。

電気屋さん、「家電製品の中にゴキブリが巣を作るのはよくあることでね。あったかいし、湿り気もあるしエサもあるし。この前も、急にうごかなくなったから見てくれっていうことで行ってみたら、炊飯器の中にゴキブリの巣があったんですよ」。
うげーー!
炊飯器にゴキの巣っっっ!!
考えるだけでトリハダが立つっっっ!!!

「とりあえず持ち帰って修理しますけど、駆除しないとまた同じことになりますから」と何度も「駆除」と繰り返して電気屋さんは帰っていった。

食器乾燥機が置いてあったところには、たくさんのカボチャのタネの食べかけ(ネズのちっこい歯型あり)やらしなびた野菜の残骸やらがとり散らかっていた。
そして何モノかの排泄物と思われる無数の黒い物体。茶色の「脚」や「羽」なども・・・。
一瞬躊躇したが、「お仕事お仕事お仕事・・・」と心の中で念じ、平常心で片付ける・・・ううう。

そういえばうちも去年、平成元年からの電子レンジを買い換えたときに、その動かした下からゴキちゃんの死骸が出てきたっけ。
・・・「よくあること」だ。
うちの炊飯器にもゴキがひそんでいるかもしれない。
台所はワンダーランドなのであった。

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