「セックスボランティア」河合香織 を読む。

本文中「第四章 王子様はホスト・・・女性障害者の性」より。
「先天性の股関節脱臼があり車椅子生活の26歳の女性。
両親公認の中、週に1,2回、障害者割引がきく出張ホストを家に呼んでいる。
『障害のある人でも感情はある。本当はこうやって性をお金で買うことは悪いことなのかもしれない。でも、私には他に可能性がなかった。
どんな方法であれ、こういう機会があったことはよかった、とこれからもずっと思えるでしょう。恋愛や性の機会がない人もいるんです。性の商品化とか何とか、周りの人はいけないいけない、といっているかもしれないけど、少しでもその人が笑える可能性があるのなら、許されてもいいんじゃないかと思います』」。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

昨年、話題になりベストセラー上位に入っていた本。
書店でいつも平積みにされていて、「障害者の性の実態レポ」ということでどんな内容なのか気になってはいたが、タイトルがタイトルなので手に取れなかった一冊。
予約をしたのも忘れた今頃、やっと図書館で順番が回ってくる。

それだけ人気の本だったんだろう。
だって、タイトルが衝撃的だもんなあ。
「えっボランティア?・・・なら自分にも」と興味本位で手に取り、がっかりした人も多かっただろう。

序章からして「えっ」と思う内容。
69歳身体障害1級の男性が性について語るビデオの内容から始まる。
障害者の性について取材している著者が見たビデオである。
重度の障害者である高齢の男性のアダルトビデオやソープランドを利用する生々しい話に続いて、性器をむき出しにしてマスターベーションが始まる。
障害のためうまくできないので撮影者である若い男性が手を伸ばし老人の性器を上下にゆっくりと擦始める・・・。

これが「性の介助」。
自慰行為をしてあげるだけでなく、体の自由が利かない二人が結合できるように「介助」する場合もあるという。
男性が男性に介助する、親が子に介助するという実態。

「命がけでセックスしている 酸素ボンベをはずすとき」「15分だけの恋人 『性の介助者募集』」「王子様はホスト 女性障害者の性」などなど、目次には衝撃的な言葉が並ぶ。
が、内容としては、著者の感情などはいっさい交えず、美談にするでもなく偏見をもつでもなく、ありのままを淡々と書いている、といった感じ。
これを知ってどう思うのか、それはあなたたちの勝手ですよ、といったような。

重度の障害のある方の場合、知的障害の方の場合、女性の場合など様々な立場の障害者の方における「性」についてレポートしている。
オランダには20年前からセックスボランティアの団体があり、障害者のセックスのために市から助成金も出ている、などの外国の実例もある。
実際にボランティアをしてみたが、気持ちの面で折り合いをつけられずやめてしまった人の話など、「ああ、そうだよな。『ボランティア』は現実問題、無理だろう」・・・と思うような話も。
ならば「ソープランドの障害者割引」のようにお金を介入させればいいのか、というとそれもどうか、と。

知らなかった世界のことで、おどろいてしまうことばかりだったが、読んでいる間、読んだ後ともに、なんだかやりきれないようなモヤモヤっとした気持ちのようなものがあったのは事実。
知らなくてもいいことを知ってしまった、というような。

それは、障害のあるなしにかかわらず、「性」だけを求めるのは違うだろうと思うからか。
「セックス」をすればそれでいいのか。気持ちのつながりとかそんなのはなくてもいいのか。
それに「結婚」も「性」も知らないままの生活、というのは何も障害者に限った話でもないだろうし。

「セックス」のボランティアではなく、気持ちを通い合わせる相手を見つける場を作るためのボランティアのほうが大切なんじゃないのか。
・・というふうに思うのはキレイゴトで、やっぱり私が「障害者の現実」をわかってないからなんだろうか。

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