「青に捧げる悪夢」を読む。
ドクロの表紙が涼しげ(?)なミステリーホラー短編集。

10人の作家さん(恩田陸・若竹七海・近藤史恵・小林泰三・乙一・篠田真由美・新津きよみ・岡本賢一・瀬川ことび・はやみねかおる)の競作で、一作品30ページほどで読みやすい。
私としては、乙一さん・恩田陸さん・小林泰三さんあたりがお目当てで読み始めたが、どれもこれも粒ぞろい。

おもしろかったもの3作品をあえてあげると・・・

乙一の「階段」。
「あれから12年が過ぎていた」で始まるプロローグからぐいっと引き込まれる。
壁も屋根も黒色で、外壁となる木の板は湿り気を帯びてところどころ苔をはやしている古い家にある崖のように急な角度を持っている黒い階段・・・。
父親に精神的・肉体的に虐待される姉妹のお話なのだが、読んでいてハラハラドキドキ。
ラスト付近は思わず手に汗を握る。
上手い作家さんだなあとあらためて思う。

岡本賢一の「闇の羽音」。
これはスゴイ。そして気持ち悪い。
いなくなった友達を探しに、廃墟となった工場とマンションに乗り込んでいく中学生ふたり。
友達だけではなく毎年行方不明者が出ているのは巨大な寄生蜂が生息しているため。
巣につれこまれて見たものは、首に卵を産みつけられたまま気を失っている人々。
生きながらにしてその体を蜂の幼虫に食われるのであった。
腹の中で幼虫が育っているホームレスの男の人がなんといっても不気味。

瀬川ことびの「ラベンダー・サマー」。
秋の学祭に向けて映画を製作しようとしている映研の部員たち。テーマは「避暑地の恋」。
リゾートの一面のラベンダー畑で出会った少女は白い日傘をさしたフリルたっぷりの白のワンピースの砂糖菓子のような女の子。
イメージぴったりのその少女に「女優」をたのみこんで、映画を撮り始めた部員たち。
肉眼ではかわいらしい女の子なのだが、撮った映像に映っているのは土気色をして紫の斑紋がういている死人・・・。
夏の日の恋を美しく描いているだけに、不気味さはひとしお。

暑い夏にはぴったりのミステリーホラー!
思わぬ拾い物をした気分。
なんといっても軽く読めるし、ミステリー好きな人にはおすすめの一冊。

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