9月末からの一ヶ月ほど心身ともに低迷していた。
朝起きたとき、「この先、生きていてもいいことなさそうだなあ・・・」そんな気持ちになってしまうほどずーっとモヤモヤした気分だった。

カゼをひいて体調が悪かったというのもあるが、お仕事でものすごい人に出会ったから。
人生40ウン年生きてきてあんなに強烈なキャラの人に関わったのは初めてである。

「磯野さん、ものすごく勉強になるお宅があるんだけど行ってみる?」と主任に言われたのは9月半ば。
訪問するお宅は70半ばの男性の一人暮らし。
以前料亭を経営していて人に指導する立場でもあったというキビシイ人、とウワサでは聞く。
数々のヘルパーが泣いて帰ってきたとか皿を投げつけられたとかでやめた人もいる、とも。
でもさまざまなことを良く知っているのでとても勉強になる、とも。

実際訪問した人たちのリアルな話を聞いたわけではないし、私もまだまだ勉強不足だなあという気持ちがあったので、勉強になるなら行ってみるかなと思う。
行くことが決まると、「行くことになったんだって?」「・・・選ばれたんだあ。がんばってね」という言葉をあちこちでかけられる。
あっこれは私がどれだけそのお宅でやれるか注目されてる、数々の人たちが撃沈したそのお宅、もしそこで認められたらすごいなあ、よーしがんばるぞ!と自分でも思った。
・・・今思うとわれながら素直かつ健気であった。

訪問するお宅が決まると、今までの経過など書かれたファイルに目を通すのが第一歩。
ウルサイお宅は注意点がこまごまと書かれているのだが、なんとその方、まあ仮に本日ドラマ開始の「花より男子」にちなんで道明寺さんとしよう、道明寺さんのファイルには膨大な数の注意書きが記されている。

やるべきことは、「清拭(体をふく)・トイレ掃除・買い物・調理・洗濯・漢方薬作り・ゴミ捨て・片付け」。
なのだが、洗濯ひとつをとっても、どの洗濯物をどのネットに入れるのか洗剤の量や洗い方はどうなのか、ハンガーへのかけ方・干す位置・干す順番など、こと細かに決まっているのだった・・・。
O型でおおざっぱなワタシにはちょっときびしいかも・・・と不安がよぎる。

初回訪問は主任といっしょ。
体の不自由なお年寄りの一人暮らしとは思えないほどよく片付いている邸宅・数々の手入れの行き届いた調度品。
機能的な間取りの居間の真ん中に圧倒的なオーラを放つ道明寺氏が座っていらっしゃる。
ニコリともせずに「ここは道明寺の家ですから。わからないことはすべて私に聞いてからやってください」。
「よろしくお願いいたします。いろいろなことを教えていただけると伺ってまいりました」と頭をさげる。
「私はあなたからギャラいただいているわけではありませんから教えることなどいたしません。あなたに求めるのは完璧な介護です」。
・・・はい。初回から圧倒される。

続く

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