薬物疑惑

息子の私立高校受験の願書提出。
といっても、いつもの郵便局からの郵送なので気合いの入れようもない。

私立校の願書提出は親のお役目。
そういえば、2年前の息子の友達たちの中学受験のとき主婦仲間たちが言っていたな。
「10時受付だからと思って9時過ぎに行ったらもうものすごく並んでいた」とか
「寒いと思って山登りのようなダウン着ていったらみんななんかセレブっぽい格好で来ていて浮いてしまった」とか
「受付順にいい教室で受験できたらしくて、うちの子は暖房が効かない体育館での受験だった」とか。

直接学校に持ち込むのと違って、郵便局での受付は「出した感」がない。
本当に届くものかどうか。
手続きがうまくいかないために、受験できないなんてことになったら申し訳なくてあとあと自分がつらいし。
「どうしますか？『簡易書留』で出しますか？『配達記録』にしますか？」と言われるが、なんのことやら。
なんだかみなさん配達記録とやらで出しているようなのでそれにしてもらう。

やれやれ・・・と家に帰ったところ実家の母から電話。
いろいろと話しているうちに、息子の受験の話になる。
母、「どう？かぜひかないで勉強してる？」。
「うん。がんばってるよ。『アタマの良くなる薬』も飲んでるよ」と私。
「なに？何の薬？」と母。

「アタマの良くなる薬」とはファンケルから出ている「能力応援パック」というサプリメント。
年末に、息子「なんかさーアタマの良くなるクスリ？売ってんだって。○○（デキる友達）が飲んでんだって」と学校で聞いてきたモノ。
「まるい　いっかい　じゅけんせいパック」などとヘタクソな字で書かれた息子のメモを頼りに、半信半疑で丸井の1階にいってみると・・・。

確かにあった。
さまざまなサプリメントが売られている中に、「ここ一番の受験生に効く！」というちっちゃなノボリとともに、「能力応援パック」と書かれた箱が並んでいる。
まず値段を見る。
・・・3670円！！！

ただでさえ出費が相次いでいるのに、気休めにしてはなかなかいいお値段である。
サプリなんてものはただでさえ効くんだか効かないんだかわからないのに、受験生の（母の）足元を見てるなー・・・。

効能？を読むと、「記憶や学習の栄養素」として「DHA（目や脳の栄養素）・ホスファチジルセリン（思考回路維持）・記憶サポート・快視サポート」がそれぞれ一日分ずつパックにしてあり30袋入り。
こんなモノに4000円弱払うくらいなら、問題集の何冊かでも買ったほうがまだマシでは。
こんなの買うようじゃバカな母もいいところだな。
・・・と思ったのに、買ってしまった。
「30袋なら3月まで2箱必要だから、もう一箱買うかも？」などと思い、しっかりファンケルの会員にもなってしまっていた。

・・・・という説明を母にする。
母、電話口でいきなり声をひそめたと思うと、
「そんな話、誰かに言うんじゃないよ。バレたら大変だよ。クスリ飲んでるなんて。ディープインパクトだって失格になったんだから」と母。
あー。
ドーピングかー。

「高校入試で薬物疑惑！？」とか「受験場で尿検査義務付けか？」とかそんな見出しが躍る新聞紙面が思わず目に浮かぶ。
「都会ではいろんなものが売ってるんだねえ・・・」としみじみと言う母の言葉がやけにツボって、何度も思い出し笑いをしてしまうのだった。