この前ウラに書いたんだけどこっちに。

東北新幹線に乗ると座席に「トランヴェール」という月刊の雑誌が置いてある。
JR東日本管内の歴史や文化のことだとか駅弁の紹介だとかが旅情あふれる写真とともにつづられている。
青森新幹線の開通の前は青森の特集だったり、5月号は新潟の酒文化の特集だったり。今回は漫画雑誌モーニングで連載されていた「夏子の酒」のモデルとなった酒蔵のことが書かれていてなかなか読み応えがあった。

「トランヴェール」はフランス語で「緑の電車」という意味。
「トラン」が、英語なら「トレイン」なんだろうな。

いつも私が乗る「はやて」「やまびこ」は上半分が白、下半分が紺色で、真ん中にツツジをイメージしたピンクのラインが入っている。
2階建ての「MAXやまびこ」は真ん中が黄色いラインだし、最初のころの丸っこい鼻で丸い目の「緑の新幹線」のおもかげはまるでない。
青森新幹線の「はやぶさ」もちょっとシャレた緑色で、いつのころからか東北新幹線もかっこよくなってしまい、レトロな丸い顔の緑の新幹線がなつかしい。

息子、幼いころ電車が好きな時期があった。
まだ言葉もおぼえたての1歳か2歳。息子は「緑の新幹線」のことを「びびけん」と言っていた。
おぼつかない口元で言う「みどり」は「びび」。「しんかんせん」は「けん」。
対して東海道新幹線は「あおけん」。
新幹線は緑と青の2種類。ほんの15年前くらいなんだけどなんかシンプルでいい。

東北新幹線には開業以来ずーっとお世話になりっぱなし。
30年前には東京の大学生となった私と故郷をつなぎ、就職したばかりの盛岡時代には遠恋の舞台となり、結婚して首都圏に来てからも新幹線のおかげでいつでも行けるという安心感がある。急ぎなら日帰りもできるようになった。
元気だった頃の父や母をこちらに運び、コドモたちも赤ちゃんの頃から盆暮れには必ず新幹線でジジババのもとへ。
母が倒れる前の激ビンボー時代の何年かは交通費節約のため車でのみの移動だったが、新幹線はやっぱりふるさととの絆。
だからこそ、震災で被害を受けた新幹線の線路の状況や駅のホームの写真には胸がつぶれる思いだった。

さて、この連休に2ヶ月ぶりで新幹線に乗ることができた。
さっそく「トランヴェール」を手にとる。
伊集院静さんの巻頭エッセイを毎号楽しみにしていたから。

伊集院さんは仙台在住。
今の奥様は篠ひろ子さんだけどその昔は伝説の夏目雅子さんのダンナだった作家さん。
ちょっとズレるが、先日、スーちゃんの告別式のときにスーちゃんのダンナは夏目雅子さんのおにいさんだったと知る。

その伊集院さんのエッセイは自然のことや季節のこと、幼いころや若かった頃の思い出、さまざまな人との関わりなどを書いていて、言葉の使い方にも毎回感動させられとてもとても好きだった。
読んでいる言葉の行間から、そのときの情景・風の匂い・光の具合・人物の細かな表情などが立ち上がってくる。言葉も真理をついている。
母が体調を崩してからのここ2年ほど毎号楽しみに読んでいた。

2月号は読んで、3月4月は新幹線に乗ってないので読んでない。
実は2月は母の体調が思わしくなく、ちょっと重い気持ちをかかえたままの帰省だった。
そのときのエッセイは「私が車両の中で静かにするのを心がけるのは、そこに悲しみの帰省をする人がいるはずだと思うからだ。そう考えると、電車は人の人生を乗せて走っていると言っても過言ではない」・・・と。

そうだよなあー・・・と共感したのでケータイにメモし、「今までのもメモればよかった。というか、コレは『ご自由にお持ちください』だから持ち帰ればよかった。これからはそうしよう」と思ったのだった。

さて、「5月号だ!」といそいそと手にとって伊集院さんのエッセイを読もうとしたら・・・。
角田光代さんに代わっていた。ショック。
よりによってこの3月で最終回だったなんて。
最終回を逃してしまうなんて。残念でしょうがない。


コメント

浜乙女(箱推し)
2011年5月16日19:28

「八日目の蝉」良かったですよーーーーー
是非コンブさんの感想を聞きたいです!!!!

磯野コンブ
2011年5月21日16:41

☆浜乙女&カプリシャスさま
「八日目の蝉」、NHKドラマでは見逃したので映画は見よう!と思ってました。
そう思ってるうちに「ブラックスワン」が公開され「パイレーツオブカリビアン」が公開され・・・。
自分の中では映画館で見るのは洋画が優先されてしまうので近いうちにね。
今のところ邦画ナンバーワンは「男たちの大和」だけど、それを超えるか?
角田さんは人の心のひだを描くのがとっても上手な作家さんだと思いますよ。

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