延命しますか

2014年12月26日 日常
施設にいる母。11月から全身状態が低下し一時入院した。
もう延命もしない、という苦渋の決断をしたので病院ではやれることがなく今は施設に戻っている。
ほとんど眠っている様子らしい。
施設の職員さんたちが口から少しずつ水分や栄養ゼリーを入れるようがんばってくれているが、飲み込みができなければそれまで。

2年前のちょうど今頃も食べられなくなりもうダメだと覚悟を決めた。葬式の段取りまで考えた。
が、入院しての中心静脈栄養のおかげで奇跡の復活をとげる。
ほとんど寝たきりで私が行ってもだれかわからない。でもやっぱりこうして母が生きているというだけでいいんだな、と思いながら2年が過ぎた。

今回も2年前と同じく、父と私と妹は決断を迫られる。
「もう口からは食べられないだろうから鼻から栄養入れますか?
手術に耐えられる体ではないので胃ろうはもうできません。
ご家族でよく話し合って考えをまとめてください」。


ダンナの母も胃ろうで寝たきりで病院で何年か過ごした。親戚のおばあちゃんも胃ろうで100歳過ぎまで生きた。
二人とも本人意識なく生きているというだけの状態。
でも息子たちは言う。どんな形であれ生きてそこにいるというだけでよかったよ、と。

私も父もそのことが頭にあったので、延命は本人には苦しいだけかもしれないけど何か今の医療でやれることがあったらやってもらったほうがいいのかな、とぼやっと思っていいた。
2年前にも栄養を入れたおかげで命を長らえたということもあったし。

ところが妹は違った。

「延命?そんなのは介護してない人の言う言葉」。
キッパリそう言いはなった。
ああ。そうだ。そうだよね。

妹の言うことは身につまされた。
母が倒れてから6年、何かというと近くにいる妹が父母を見てきた。
妹のダンナのお母さんも見ているので、3人の高齢者のお世話をしていることになる。
うちに関して言えば、高齢の父や遠くにいる姉(私)はいざというとき役に立たない。何かあれば夜中でもなんでもかけつけるのは妹。
いつ夜中に電話があるかと思うとゆっくり寝られない。
近くにいるのだからとしょっちゅう様子を見に行って当たり前。
行かなきゃ行かないで責められてる気がする。行けば行ったですっかりやせて死にそうな様子を見ることになりつらい。
そんな中で父の通院や留守番で呼ばれればかけつけたりで、とにかく身も心もボロボロ。
やりたいことはいつも後回し。落ち着いて休むこともできない。これが一体いつまで続くのか。もう限界だ、と。

妹は心根が私よりずっとやさしくお世話好きだ。自分のことを後回しにしても人のために喜んでもらえることを優先する。
今回だって、母に長生きしてもらいたいのは妹も同じ。
それでもそれでも・・・一番そばにいるからこそ一番「延命」を重く受け止めての妹の気持ちなのだ。

経鼻栄養でもやってもらえたらと思っていたものの、私と父は言葉を飲み込み何も言えなかった。
父と私は実家へ帰宅。妹は自宅へ。

次の日の朝、父は言った。
「俺が息子なら延命する。でも俺の方が先に逝くかもしれない。そうなったらあれ(妹)ひとりでは背負いきれない。2年前は俺もまだ元気だったし、ばあさんもまだ80にもなってないのだからなんとかしたいと思ったけど、あれから2年もがんばった。年が明ければ81だ。もういいんじゃないか。このままじゃあれ(妹)がかわいそうだ」。


・・・私も実家近くで生活していたならなんとかできたかもしれない。
今の状態では生活の基盤が離れていてすぐに何度も行ったり来たりできない。
かといってやっと保っている今のこちらでの生活を放って実家に戻ることもできない。

言葉には出さなかったが、父の決断を申し訳なくつらく受け止める。
親から離れたところに住むという選択をした以上、いつかこういう日がくることがわかっていたはずではないのか。
先延ばしにして思考停止していたけれどこういう日は必ず来るのだ。

それと同時に・・・私の築き上げたかった生活とはかけ離れてしまったシェアハウスもどきの家族を思う。
言葉の少ないつまらないダンナ。親とか息子とかめんどくせぇと思っている息子。会話もないので食事をいっしょに食べる気にもならず団らんなんてもちろんない。
娘とは話もよくするしいっしょに出かけたりもするが、娘は出ていく人。
娘がいなくなったら私はこの家で話す相手もいない。

私が20何年かかってなんとか築き上げたかったものは形にはならないでしまった。がんばってもがんばってもだめだった。
きっとシェアハウスだからこそなんとか顔を見たりしていないとすぐに空中分解してしまう、そうわかっているからここを離れられないでいるのかな。
せめて娘が家にいるうちは、と。

こんな思いをしてまで私はいったい何を守ろうといているのか?と父母に対して申しわけなく情けない気持ちになる。
遠くに離れてしまった娘はそれだけで親不孝者だ。


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