ポメ子とのお散歩コースに老夫婦が暮らしている古い平屋があった。
早朝通りかかるとよくおじいちゃんが慣れない手付きで洗濯物を干していた。
80は過ぎているか、うちの父と年頃も同じくらい。たまに家の奥の方で姿が見えるおばあちゃんはパジャマ姿の白髪頭で体調は良くなさそう。実家と同じく爺が婆をお世話する老老介護だなあ、と思って他人事とは思えない。

おじいちゃんが洗濯物を干していると通りがかりにあいさつして「かわいいわんちゃんだね」と声をかけられたり「暑くなってきましたね」と言ったり。たまに一言二言会話をしていた。

夏のころ。あれーきょうは雨戸がまだ開いてないなあ、と思う日が多くなった。夏場は暑いので散歩は早朝5時代。きっとお散歩時間が早いからまだじいちゃん起きてないんだなと思ってた。
今年は残暑がなくて朝涼しくなるのも早かった。秋になって散歩時間が7時近くなっても毎日雨戸が閉まったまま。おかしいなあーと思ったものの、庭の花や植木が枯れた様子もないので、お寝坊してるのかなと思うくらい。

9月も半ばになった日曜日。その日は9時過ぎに散歩に行ったのにまだ雨戸が閉まっている!
ここにきて初めて気づく。おじいちゃんかおばあちゃんが体調を崩して入院したかどこかへ引き取られていって空き家になってしまったのだと。

そしてきのう。
ショベルカーが入ってその家は取り壊されていた。
壁が引き壊されていたので中が見える。小さな庭に面して部屋が2つ。流しと湯沸かし器がある狭い台所。壁は崩され押入れもむき出しになっていた。

いつもおじいちゃんが洗濯物を干していた小さな庭の隅っこに、水仙が小さな花を咲かせていた。
おじいちゃん、今年も水仙咲いたよ。ポカポカあったかいからいつもよりはやいのかな?今どこにいるの?おじいちゃんが倒れておばあちゃんどこかに引き取られて行ったの?どうしちゃったの・・・?

散歩コースとはいえそれほどのご近所ではないので、家のあるじがどうなったのかは知りようがない。
数日のうちに全部取り壊されてここは更地になってしまうのだろう。瓦屋根の古い平屋に老夫婦が暮らしていたことなどなかったかのように。
そして今流行りの新しい家が建つのだろうか。
ポメ子に声をかけてくれたおじいちゃんにはもう会えない。

コメント

砂姫
2015年12月10日0:30

せつないですね、、、

ありす
2015年12月10日7:25

その家にはいろんな歴史があったでしょうにね。
暖かいご飯を囲んで二人がテレビを見てたりした日もあったのかも。
水仙は覚えているかしら。

磯野コンブ
2015年12月10日15:58

砂姫さま
もしおばあちゃんのほうが倒れたならおじいちゃんが1人でも暮らしていると思います。おじいちゃんのほうに何事か起きたのかな、と。夏にはすでに空き家になってたのかもしれない。ホントせつないです。

ありすさま
あるじがいなくても水仙はいつもの年と変わらず花を咲かせて・・。元気だったころはおばあちゃんが切り花にして食卓を飾ったのかなとか、庭も更地にするため咲いた水仙も処分されるのかなとかいろいろ思うとなんだかかなしくなりますね。

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